読書

過去と決別し生まれ変わるために 窪美澄 『朔が満ちる』

サバイブ、したのか? 俺ら。家族という戦場から――家庭内暴力を振るい続ける父親を殺そうとした過去を封印し、孤独に生きる文也。ある日、出会った女性・梓からも、自分と同じ匂いを感じた――家族を「暴力」で棄損された二人の、これは「決別」と「再生」の物…

【読書記録】8月&9月読んだ本

もう9月も終わりに近づいているが、今年の夏は、例年通り暑いかと思えば急に雨が降り出したり気温が上下したりして、いわゆる夏っぽい日が少なかったように思う。 もともとインドアな私は、不安定な気候の中ますます外に出る気を失い、基本的に家に引きこも…

女女の最高エッセイ『女ふたり、暮らしています』

単なるルームメイトでも、恋人同士でもない。一人暮らしに孤独や不安を感じはじめたふたりは、尊敬できて気の合う相手を人生の「パートナー」に選んだ−。女ふたりと猫4匹の愉快な生活を綴る。 シングルでも結婚でもない、 女2猫4の愉快な生活。 単なるル…

チョ・ナムジュ『サハマンション』と堕胎をめぐる現状

近未来、超格差社会「タウン」の最下層に位置する人々が住む「サハマンション」。30年前の「蝶々暴動」とは何か? ディストピア都市国家最下層の人々が住む場所で、相互扶助を夢見る姿を描く。 韓国語版136万部、日本版22万部突破のベストセラー、『82年生…

レベッカ・ソルニット『説教したがる男たち』『わたしたちが沈黙させられるいくつかの問い』

特に英語圏では普遍的な言葉として普及している「マンスプレイニング」という言葉。 この言葉の流行のきっかけを作り出したのが、レベッカ・ソルニットである。 ソルニットは「マンスプレイニング」(Mansplaining)という有名なかばん語が発明されるきっか…

おっぱいからの卒業『乳房のくにで』深沢潮

21世紀目前、福美は困窮していた。抱えた娘の父親は行方知れず、頼る実家もなく、無職。ただ、母乳だけはあまるほど出続ける。それに目を付けた、母乳を欲しがる家庭に母乳を届ける活動をしているという廣田に福美はナニィ(乳母)として雇われることに。す…

キム・ジナ『私は自分のパイを求めるだけであって人類を救いに来たわけじゃない』

「セックス・アンド・ザ・シティ」を地でいくバリキャリのつもりだったけれど、全く自由でなかったのではないか…。フェミニズムに目覚め、「女性の党」の党首となった韓国人女性の、家父長制からの脱洗脳の闘いの記録。 honto.jp 先日、Twitterにてソウル市…

ハン・ガン『菜食主義者』考

韓国で最も権威ある文学賞と言われている李箱(イ・サン)文学賞を受賞し、国内で高い評価を得た本作。 英語圏でも、韓国人で初めてマン・ブッカー賞インターナショナル部門を受賞するなど、大きな注目を集めている。 日本語への翻訳はきむ ふな氏が、英語へ…

他の誰でもない「私」自身の人生を歩むために。カン・ファギル『別の人』

このレビューは2021 韓国文学レビューコンテストの応募作品です。 この本が、そして韓国文学が、より多くの人に読まれることを祈って。 〇カン・ファギル『別の人』 2021年3月28日、エトセトラブックスより発売されて以降、SNSで大きな反響があった本作。80…