2021-01-01から1年間の記事一覧

思春期を描いたフェミニズム・ホラー2選『ぼくのエリ 200歳の少女』『RAW 少女のめざめ』

最近思春期を描いたホラー映画を『ぼくのエリ 200歳の少女』『RAW 少女のめざめ』と立て続けに観た。 ホラー映画は基本的に苦手で、観始めても途中でギブアップしてしまうことがほとんどなのだが、この2本についてはなぜか怖いと思わず、最後までじっくりと…

脱北者の闘いは続く『ファイター、北からの挑戦者』

韓国・ソウルで新たな人生をスタートさせた北朝鮮からの脱北者の女性がボクシングと出会い、生きる希望と勇気を取り戻す姿を描いたドラマ。ソウルの小さなアパートにたどり着いた脱北者のリ・ジナ。残してきた父を呼び寄せるため多くのお金を稼ぎたい彼女は…

過去と決別し生まれ変わるために 窪美澄 『朔が満ちる』

サバイブ、したのか? 俺ら。家族という戦場から――家庭内暴力を振るい続ける父親を殺そうとした過去を封印し、孤独に生きる文也。ある日、出会った女性・梓からも、自分と同じ匂いを感じた――家族を「暴力」で棄損された二人の、これは「決別」と「再生」の物…

子どもの純粋さと残酷さに胸を引き裂かれる――セリーヌ・シアマ監督『トムボーイ』

観終わってまず最初の感想:胸が痛い。。 2019年・第72回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞するなど高い評価を受けた「燃ゆる女の肖像」のセリーヌ・シアマ監督が、2011年に手がけた長編第2作。引っ越し先の土地で新たに知り合った友人たちとの間で男の子とし…

【読書記録】8月&9月読んだ本

もう9月も終わりに近づいているが、今年の夏は、例年通り暑いかと思えば急に雨が降り出したり気温が上下したりして、いわゆる夏っぽい日が少なかったように思う。 もともとインドアな私は、不安定な気候の中ますます外に出る気を失い、基本的に家に引きこも…

息を呑むほど美しい映画『モロッコ、彼女たちの朝』

地中海に面する北アフリカの「魅惑の国」モロッコから、小さな宝石のような映画が届いた。カサブランカのメディナ(旧市街)で、女手ひとつでパン屋を営むアブラと、その扉をノックした未婚の妊婦サミア。孤独を抱えていたふたりだったが、丁寧に捏ね紡ぐパン…

女女の最高エッセイ『女ふたり、暮らしています』

単なるルームメイトでも、恋人同士でもない。一人暮らしに孤独や不安を感じはじめたふたりは、尊敬できて気の合う相手を人生の「パートナー」に選んだ−。女ふたりと猫4匹の愉快な生活を綴る。 シングルでも結婚でもない、 女2猫4の愉快な生活。 単なるル…

#小田急フェミサイドに抗議します――社会に蔓延る女性蔑視を直視せよ

2021年8月6日午後8時半ごろ、世田谷区の成城学園前駅付近の小田急線の車内で男が刃物を振り回し、20歳の女性大学生を含む10人が刃物で切り付けられるなどして重軽傷を負うという痛ましい事件が発生した。 事件から約一か月経った今、改めてこの事件の背景・…

チョ・ナムジュ『サハマンション』と堕胎をめぐる現状

近未来、超格差社会「タウン」の最下層に位置する人々が住む「サハマンション」。30年前の「蝶々暴動」とは何か? ディストピア都市国家最下層の人々が住む場所で、相互扶助を夢見る姿を描く。 韓国語版136万部、日本版22万部突破のベストセラー、『82年生…

歴史修正主義の蔓延に終止符を『否定と肯定』

ミック・ジャクソン監督作品。ホロコーストの真実を探求するユダヤ人の女性歴史学者デボラ・リップシュタットと、イギリスの歴史作家で、ホロコーストはなかったとする否定論者のデイビット・アーヴィングが、2000年ロンドン法廷で対決した実話に基づく作品…

レベッカ・ソルニット『説教したがる男たち』『わたしたちが沈黙させられるいくつかの問い』

特に英語圏では普遍的な言葉として普及している「マンスプレイニング」という言葉。 この言葉の流行のきっかけを作り出したのが、レベッカ・ソルニットである。 ソルニットは「マンスプレイニング」(Mansplaining)という有名なかばん語が発明されるきっか…

「良妻賢母」神話を歌って吹き飛ばす『5月の花嫁学校』

フランスを代表するオスカー女優ジュリエット・ビノシュ主演、「ルージュの手紙」のマルタン・プロボ監督によるコメディ。1967年。フランスのアルザス地方にある花嫁学校、ヴァン・デル・ベック家政学校には今年も18人の少女たちが入学してきた。経営者であ…

おっぱいからの卒業『乳房のくにで』深沢潮

21世紀目前、福美は困窮していた。抱えた娘の父親は行方知れず、頼る実家もなく、無職。ただ、母乳だけはあまるほど出続ける。それに目を付けた、母乳を欲しがる家庭に母乳を届ける活動をしているという廣田に福美はナニィ(乳母)として雇われることに。す…

キム・ジナ『私は自分のパイを求めるだけであって人類を救いに来たわけじゃない』

「セックス・アンド・ザ・シティ」を地でいくバリキャリのつもりだったけれど、全く自由でなかったのではないか…。フェミニズムに目覚め、「女性の党」の党首となった韓国人女性の、家父長制からの脱洗脳の闘いの記録。 honto.jp 先日、Twitterにてソウル市…

エリザ・ヒットマン監督『17歳の瞳に映る世界』

新鋭女性監督エリザ・ヒットマンが少女たちの勇敢な旅路を描き、第70回ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)受賞したドラマ。友達も少なく、目立たない17歳の高校生のオータムは、ある日妊娠していたことを知る。彼女の住むペンシルベニアでは未成…

韓国の絶対的DIVAチョンハ「Stay Tonight」

チョンハ(韓: 청하、1996年2月9日 - )は、韓国の歌手。MNHエンターテインメント所属。元I.O.Iメンバー。2017年6月7日にミニアルバム『Hands on Me』でソロデビュー[1]。 (チョンハ - Wikipedia) KPOPファン歴10年以上、生粋のSMオタである私。 オーディ…

辛くても向き合うべき現実『ジェニーの記憶』

ドキュメンタリー監督ジェニファー・フォックスが劇映画のメガホンを取り、自身の体験をもとに性的虐待の問題に迫ったドラマ。ドキュメンタリー監督として活躍するジェニーのもとに、離れて暮らす母親から電話が掛かってくる。母親はジェニーの子ども時代の…

エメラルド・フェネル監督『プロミシングヤングウーマン』

2020年公開、日本では2021年7月16日公開。 監督は、俳優、小説家とマルチに活躍する弱冠36歳のエメラルド・フェネルであり、本作が監督デビュー作である。 主演はキャリー・マリガン。 その他、コメディアンのボー・バーナム、『オレンジ・イズ・ニュー・ブ…

ハン・ガン『菜食主義者』考

韓国で最も権威ある文学賞と言われている李箱(イ・サン)文学賞を受賞し、国内で高い評価を得た本作。 英語圏でも、韓国人で初めてマン・ブッカー賞インターナショナル部門を受賞するなど、大きな注目を集めている。 日本語への翻訳はきむ ふな氏が、英語へ…

他の誰でもない「私」自身の人生を歩むために。カン・ファギル『別の人』

このレビューは2021 韓国文学レビューコンテストの応募作品です。 この本が、そして韓国文学が、より多くの人に読まれることを祈って。 〇カン・ファギル『別の人』 2021年3月28日、エトセトラブックスより発売されて以降、SNSで大きな反響があった本作。80…

『恐怖のセンセイ』「男らしさ」のばかばかしさをシュールに描き出す

『恐怖のセンセイ』(原題:The Art of Self-Defense)は2019年に公開されたアメリカ合衆国のサスペンスコメディである。監督はライリー・スターンズ、主演はジェシー・アイゼンバーグが務めた。 wikipediaより(恐怖のセンセイ - Wikipedia) 日本では劇場…

ブログ始めてみました。

初めまして。 昨今のコロナ禍で自由になる時間が増え、小説・映画等を鑑賞することが多くなったため、その感想を記録する場が欲しいと思いブログを開設しました。 本や映画の感想や、日々考えていることなど上手く言語化できるようなりたいと常々思っていた…